HAMILTONに搭載されているムーブメントには製造年度を表す個別の番号が打たれていることはないので、正式な製造年度はわからないことが多い。特に、ミリタリーモデルから派生してきたKhakiシリーズはわかりづらい。GG-W-113、MIL-46374から発展して誕生する9219、921980。このモデルの手巻き仕様にはeta.2750ムーブメントが搭載されていた。このムーブメントは1969年 から1982年まで生産された6振動の手巻17石でノンデイトいうシンプルな汎用のeta社製ムーブメント。このムーブメントの輪列受けには、様々な刻印があって「HAMILTON」の刻印があるものや無いものが混在していて、その刻印のスタイルでほぼ年式を特定することになる。それと気になるのが「UNADJUSTED」の刻印、こいつも厄介でGG-W-113や初期の9219のムーブメントには、顕微鏡でも見えづらい極小文字で記載されている。これには諸説はあるけれど、20世紀前半アメリカの時計会社に従事する労働者は、スイスの時計メーカーの労働者に比べおよそ3倍もの給料が支払われていた。そのためアメリカは自国の時計メーカーを安価な輸入品の氾濫から保護する目的で、ムーブメントのグレードによって、関税が変動する従価税(じゅうかぜい)を輸入時計やムーブメントに課していたので、アメリカの輸入業者はムーブメントのグレードを過小評価して税関へ申告し、高額な税金を回避するためにムーブメントに「UNADJUSTED」を刻印したらしい。確かに、ハミルトンがアメリカでの生産を終了しスイスへ移転したからのムーブメントには「UNADJUSTED」の刻印は消えている。こんなことを、調べてみるのも古い時計の楽しみの一つかもしれない。https://mekkerun.jp/